「みやざき子ども文化センター」は、すべての子どもが人として、おとなと共にのびやかで豊かに生きられる社会を目指します。

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宮崎大学大学院教育学研究科 准教授 竹内 元さん

私たち夫婦が大切にしている宝物に、みやざき子ども文化センターが主催した「街の小さな音楽会」に参加している息子の写真がある。彼は、カラフルな花吹雪のなかにいる。
 
 育休中であった、小さな息子を抱える妻にとって、芸術は、日常の彩りであった。「癒し」や「疲れからの解放」という言葉で片づけることではない。子どもの心が動く瞬間に立ち会えることは、母親にとって、子どもを産んだことそのものへの絶対的な肯定であるという。
 
 ほんものの芸術には、どんな小さな赤ちゃんであっても、顔がハッとする瞬間が訪れる。みやざき子ども文化センターのハードユーザーであった母親が、子どもの心が躍るという証を目の当たりにする。そうした芸術そのものの存在価値を実感したことは、子育て支援の利用者でただ終わるのではなく、子育て支援や芸術活動の輪を広げていく文化の継承者が生まれることでもある。
 そうして、子育て支援は次世代に引き継がれていく。
 
みやざき子ども文化センターの活動には、人間の本質的な営みにふれる場がある。そうした日常は、絶やしてはならない。

チェリスト 土田 浩さん

 いわゆる、知育(確かな学力)、徳育(豊かな心)、体育(健やかな体)といわれるが、アート(芸術)は何か?もちろん、徳育(豊かな心)のなかに入ります。そもそも3つの柱のように言われていますが、現実は、知育が中心であとはあれば良いぐらいになっています。(学校のカリキュラムを見れば明らか!)

 しかし、本来、人にとってアートは食や睡眠などと同じように、人が成長(形成)されるのに最も必要なものです。特に音楽については、脳学者の茂木さんは「人が音楽を聴いたときの脳の状態は、食べたり飲んだりした時のそれと非常に近いことがわかっている。音楽から得られる喜びは、生物として基本的、本能的な喜びの回路と共通している。」と述べています。
 つまり、音楽体験は、生命原理に近いものであり、音楽は、人が生きていくために必要な空気や水のようなものなのです。そして、これは他のアートについても同じことが言えると思います。

 それでは、いかに子どもたちにアート体験をさせるのかですが、「とにかくたくさんの機会を与えてあげること」これは、現代の社会では、親を含めた周りの大人が作ってあげることが必要でしょう。そして、少しでも興味を示したことには、次の機会を与えてあげること、しかし、なかには、最初まったく興味を示さなかったことにも、回を重ねることで興味を持ちだす子もいるので注意しなくてはいけません。

 ここで、最も大切なことは、大人がすぐに成果を求めようとしないことです。絵が上手に描けるようになる、演奏が上手に出来るようになることが目的ではなく、大事なことはアートの体験をすることなのです。そのためには、継続していくことが重要で、まさに”継続は力なり”です。

 本来、教育とは遅効性なものです。漢字や公式はいくつになっても覚えられますが、子どもの時のアート体験で得るものを、残念ながら大人になってから得ることはできません。”急がば回れ”です。